カテゴリー別アーカイブ: 航空機

「エオラス号」救出に思う。~太陽の飛行艇~

自衛隊が「宮城県金華山(きんかさん)南東方沖における人命救助に係る災害派遣について(最終報)」を発表している。ニュースキャスターの辛坊治郎、全盲のセーラー岩本光弘の救出についての報告だが、あっさりしたものだ。
世間的には救助された両氏の知名度から騒がれているが、自衛隊にしてみればいつもの救助活動だからだ。

救助された両氏への批難も大きいが、経歴を見る限り、素人の火遊びという感じではない。運が悪かったと言った方がいいのではないだろうか。
なぜなら、今回投入された飛行艇は一機目も二機目の最新鋭の新明和US-2だった。波高3メートルでも着水可能という世界最高の性能を誇る。自衛隊の練度の高さはもとより言うまでもないだろう。
それが着水できなかったのだ。当時の荒天ぶりがうかがわれようというもの。

新明和US-2は、戦中の傑作飛行艇「二式大艇」こと川西「二式飛行艇」の遺伝子を受け継ぐ、日本が世界に誇る飛行艇だ。
US-2の前身は新明和US-1A。まさに「二式大艇」復活を期して開発された、水上機大国日本を代表する新明和(川西飛行機)渾身の機体だった。
そのUS-1A運用当時から、実は自衛隊は東シナ海などでの海難救助で活躍していた。領海外での活動でもあるので、長らく知られていなかったが、他国の船舶は勿論、飛行艇も近づけない状況で、多くの人命を救ってきた。
しかし、それを可能にするには、機体の性能もさることながら、厳しい訓練に裏付けられた高い練度が必要。当然訓練でも危険性が高いものが多く、それが隊員の死亡事故に繋ががったこともある。しかし、それは紙一重の状況で行っているものであるから、再発防止を求めることは必要だろうが、いたずらに批難されるべき類いのものではないだろう。

今回の件にしても、事故の状況をよく調べてから、両氏とスタッフに批判しなければならないだけの甘さがあれば、好きなだけすればいいだろう。

しかし、覚えておかなくてはいけないのは、たとえ自業自得と言われる海難事故だったとしても、US-2とそれを駆る隊員達は、必ずそこへ行くと言うことだ。
太陽の飛行艇は、雲を破って現れ、そして荒れる海から、希望とともに陽が昇る如くに飛び立つだろう。


(ReinaJapanさんの映像)


(Teruya Tsujiさんの映像)

帰ってきた二式大艇―海上自衛隊飛行艇開発物語 (光人社NF文庫)
碇 義朗
光人社
売り上げランキング: 32,903
烈風が吹くとき―大西画報
大西 信之
大日本絵画
売り上げランキング: 283,877