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【歳時記と落語】冬至に食べる7つの開運食

12月22日は冬至です。二十四節気の中でも重要な節気の一つです。暦では、冬至があるのが十一月と定められています。
一年で一番日が短い日と言われますが、実際にそうなるかどうかは、暦と天体の動きの関係で絶対とはいえんようですが、古く四書五経の一つ『 尚 書』の「 堯 典 」の中にも 「 日 短 」と書かれております。また「冬至一陽生(冬至は一陽生ず)」ともいい、陰の気が極まり、陽の気が生じ始めるときとされております。「一陽来復」とも言いますな。つまり冬の極まりということは、ここからは段々春に向かっていくという訳ですな。最も実際はまだまだ寒さは厳しくなっていきますが。
北宋の蘇軾の「冬至日独遊吉祥寺(冬至の日、独り吉祥寺に遊ぶ)」にも、そんなことがうかがえます。

井底微陽回未回  井底の微陽 回(めぐ)るや未だ回らざるや
蕭蕭寒雨湿枯荄  蕭蕭たる寒雨 枯荄(こがい)を湿す
何人更似蘇夫子  何人か更に似たる 蘇夫子に
不是花時肯独来  是れ花時ならざるに 肯て独り来たる

この冬至には昔から、カボチャを食べるという風習がありますな。カボチャは保存が利きますんで、昔は冬の貴重な栄養源やったんです。実際にかぼちゃにはカロテンが豊富で、体内ではビタミンに変わります。ちゃんと理にかなっているわけですな。
もう一つ、ゆず湯に入るというのもありますな。無病息災を祈るもんですが、これも実際に血行がよくなり、よう身体が温まりますから、単なるまじないという訳ではないようです。
それから、今はあんまりやりませんが、「ん」のつく食べもんを食べるというのがあります。「運」が着くようにと言うわけですな。この「ん」のつくもんというのが七つあるそうで、「なんきん」「にんじん」「れんこん」「ぎんなん」「きんかん」「かんてん」「うどん」やそうです。全部「ん」が二つつく。「うどん」は一つやとおっしゃるかもしれまへんが、漢字で書くと「饂飩(うんどん)」ですな。
この「ん」のつくもんが出てくるのが、「ん廻し」別名「田楽喰い」ですな。

まあ、これは四月に木の芽のところで紹介しましたな。噺の中では特に季節がうかがえるようなところもありませんので、特に冬至という訳でもない。
そこで今回は「うどん」に関係した噺をひとつ。

寒い中をうどん屋が商売しております。屋台というても今のような立派もんやない、天秤棒の両側に縦長の行李がついているようなもんです。
酔っ払いに絡まれたりで、なかなか商売になりまへん。
ある町内で、男に呼びかけられます。仲間内で集まって札の一つもやってるんやが、ちょっと腹が減ったんで、うどんでも食おうかというわけですな。しかし、まああんまり人に誇れるようなことをしているわけでもないので、使いのもんも小さい声で注文いたしまして、うどん屋にも大きな声はださんようにと言いつけます。
十人分売れて気をよくしたうどん屋が商家の前まで来ますと、また小さい声でお呼びがかかる。またようさん売れるかと思うたら、一杯だけ。味見かも分からんと希望を持って、うどんを作って持って行きます。
「お待ちどぉさんで」
「できたか? おおきに、ありがと。うまそや。ええダシ使こてるなあ。……美味かった。ごっつぉさん」
「お粗末さまでした」
「うどん屋、また明日もおいでや」
「ありがとさんで」
「うどん屋」
「へぇ?」
「お前も、風邪ひぃてんのんか?」

故・桂吉朝師匠と、故・桂枝雀師匠の一席をお楽しみください。

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【歳時記と落語】HAPPY HALLOWEEN!! といえばカボチャ!

halloween-pumpkin-11286965234H51910月31日は「ハロウィン」です。近年は日本でも大々的にやられるようになってきました。魔女の扮装やらカボチャの「ジャックランタン」やらもすっかりおなじみになりましたな。
元々、「ハロウィン」はアイルランドのケルト人たちが彼らの暦の「大晦日」に行っていた行事に起源を持つもんやそうです。そこに秋の収穫祭やらキリスト教の万聖節(11月1日)の前夜という意味合いやらが習合して出来たもんやそうです。「ハロウィン」という名前も、万聖節(All Hallow’s)の前日(eve)=Hallow+een(eve)からきたんやとも言いますな。
今のような形になったのはアメリカでのことやそうで、宗教的な意味合いはほとんどなくなってます。
ハロウィンのカボチャというと、オレンジ色ですが、これはカボチャの中でもペポカボチャの仲間です。日本で栽培されている食用カボチャの殆どは西洋カボチャで、これは江戸時代末期から明治の初め頃に入ってきたもんです。一方、伝統野菜としての日本カボチャ(東洋カボチャ)があります。これが日本に入って来たんは、江戸時代の初期です。
カボチャは「カンボジア」が語源やといいますが、漢字では「南瓜」と書きます。南から伝わったもんやというのが出てますな。他にも「南京」やとか「唐茄子」やとか言いますが、いずれも南から来た伝わったことに変わりはありせんな。
落語には「唐茄子屋政談」という噺があります。
とある大店の若旦那、放蕩が過ぎて勘当されます。すると、金の切れ目が縁の切れ目、誰も相手に何ぞしてくれまへん。いっそ身投げでも、としているところへやってきた叔父に引き止められて、唐茄子の行商を手伝うことになります。力仕事なんぞしたことがないのでへっぴり腰、担いだ天秤棒に殺されそうになるような有様で、同情されて買ってもらうという次第。売れ残ったカボチャを担いでいくと、吉原が見えてまいりまして、なにやらしんみりとした心持になります。黙って歩いていたことに気がついて、売り声の練習を始めます。
町中に戻り、ある長屋にさしかかったところで、どこか品がある若女房に呼び止められます。カボチャ一つ、ということだが、奥では子どもがお腹を空かせている。話を聞くと元は武士の家だが、今は小間物商いで生活をしているという。しかし、この三ヶ月、旅先の夫からの仕送りが滞っており、三日も何も食べていないという話。
同情した若旦那、売り上げを全部渡して、叔父のところへ帰ってきます。
話を聞いた叔父は、売り上げを誤魔化したのではという思いもあって、若旦那を連れて長屋へ確かめに参ります。
するとなにやら様子がおかしい。長屋のものに話を聞くと、くだんの女房、金を返そうと飛び出したところを因業家主に見つかって、全部取り上げられてしまい、止むに止まれず首をつった。幸い見つけるのが早く、命は取り留めたという。
怒った若旦那、大家の家に殴りこんだ。長屋一同も加勢して大騒ぎ。
この事がお上に知れ、裁きの末、大家はきついお咎めを受け、若旦那は青緡五貫文を褒美に貰い、勘当も許されます。母子は叔父の持っている長屋へ引き取られ、丸くおさまります。
所謂「大岡政談」から出た講談ダネの一つで、人情噺なんでサゲはありません。
褒美の青緡五貫文というのは、落語で褒美を貰うときの決まり文句みたいなもんで、「孝行飴」にも出てきます。一貫文は1000文なんで、銭5000枚ということになりますが、普通一緡百文は銭96枚で、4800枚しかありません。ですが、ばらして使わん限り、一緡96枚で百文として使いましたんで、値打ちは5000文ということになります。

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