日別アーカイブ: 10月 1, 2013

【歳時記と落語】秋といえば芋ですな

10月1日は中国では国慶節。言うてみたら建国記念日ですな。これでなんと一週間丸まる休みです。実に思い切ったことをしますな。制度の違う香港では当日だけが休みやそうです。
それに対して、日本では秋も深まったなぁ、というくらいで、暦では特に節気も何もあらしまへん。まあ、今年は10月5日が旧暦の9月1日、暦の上ではそろそろ晩秋ということになりまっさかいに、一つの節目とは言えんこともないですが。
中秋のときに、「芋名月」という話をいたしましたが、秋というと芋の季節でもありますな。特に関東以北では里芋の収穫が大体このくらいの時期から始まりますんで、所謂「芋煮会」が行なわれ始めます。山形の「日本一の芋煮会フェスティバル」は9月の第1日曜なんでもう終わってますが。
芋煮は大きく醤油味と味噌味の二つがあり、肉も豚か牛かという違いがあるらしい。どうもそれぞれがお互いに他の味付けが受け入れられへんようですな。まあ、雑煮が「すまし」か「白味噌」か、「切り餅」か「丸餅」か、という論争のようなもんです。京阪神は「白味噌」で「丸餅」ですな。
芋というと、サツマイモも里芋同様9月から11月が収穫期です。しかし、収穫後しばらく置いたほうが甘みが増すので、どうしても印象としては晩秋から初冬というイメージですな。
日本でサツマイモが栽培されるようになったんは17世紀の初め頃、青木昆陽が普及に努めたことは、よう知られておりますな。昔は砂糖なんぞは庶民の口にはなかなか入らなんだ。せやからサツマイモの甘さというのは、今我々が思うよりも、えらいもんやった。「甘藷」というのもそういうことがあってのことでしょうな。またサツマイモのことは「十三里」とも言うた。「栗より(九里四里)美味い」の洒落です。
今回は、これらの芋にちなんで、「芋俵」という噺を紹介しましょう。歴代の小さんの得意です。
ここにおりました泥棒三人、さる大店に盗みに入るために一計を案じます。
仲間のうちの一人を芋俵へ入れ、それを店の前へ持っていって、しばらく預かってくれと置いてくる。そのまま日がくれてしまえば、信用ある大店のこと、俵を中へ入れるに違いない。そこで、店が寝静まった頃に、俵の中から出て、二人を引き込む、という算段ですな。
俵を店の中に、というところまではうまく行ったんですが、丁稚が俵を上下さかさまに置いてしまいよって、泥棒は身動きが取れんようになってしまいよった。
そうこうしていると、丁稚と女中がやってきよった。晩飯を食べ損なったんで、芋を一つ二つくすねて、蒸かして食べようというんですな。
俵を破ったらばれるというので、俵の中に上から手を突っ込みよった。さかさになってますから、ちょうど盗人の股ぐらあたりですな。
「あれっ、なんだかこの芋ぽかぽかあったかいよ。焼芋の俵かね?」
「焼芋の俵なんぞ、あるもんかね」
「こっちはへこむ。おかしいや」
「そりゃ腐ってんだよ」
あちこち撫で回されるもんですから、盗人はくすぐっとうてたまりませんが、笑うわけにもいきまへんので、ぐっと堪えます。
下腹に力を入れますと、大きい奴が一つ。
「ブッ」
それを聞いた丁稚が一言。
「気の早いお芋だ」

NHK落語名人選(71) 五代目 柳家小さん 提灯屋・芋俵
柳家小さん(五代目)
ポリドール (1994-12-19)
売り上げランキング: 331,116
談志百席 「芋俵」「新・四季の小噺 冬編」
立川談志
日本コロムビア (2012-08-29)
売り上げランキング: 468,388